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このブログは「2ちゃんねる」の「ニュー速vip」に投稿される「ブーン系小説」について気ままにまとめたり、感想などを書いたりするブログです。
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※この作品は以前総合で投下された「ギコの視点1」(まとめ:ブンノベさん)という作品の完全版(?)のようです。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:12:07.71 ID:oyu6tF5WO
(,,゚Д゚) どうだ?

(*゚ー゚) やっぱり出来てない、みたい

 しぃが子を成せないと気付いたのはもう三年ほど前だ。
 同意の上ではあれど発情していない彼女と、半ば強引に繰り返し性交をしても彼女は子を宿さなかった。


(*゚ー゚) ごめんね……

(,,゚Д゚) ……


 哀切な表情で謝ったしぃに、そんなこと構わない、と、今なら言える。
 だが当時の俺は、しぃとの子を残せないことに激しい憤りと悔しさを覚え、しばらく彼女に辛く当たった。

 子どものままで止まってしまったような、しぃのあどけない容姿。
 体だけ大人になった俺はそれに戸惑っていたのかもしれない。
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:13:25.49 ID:oyu6tF5WO
 しぃが愛おしすぎて気が狂いそうなのに、俺の本能は他の牝を求めた。

 当然、その葛藤の中でもがく俺はしぃに優しく接することが出来ずにいて。
 その頃から、俺はすぐに怒鳴るようになった。今でもその癖はある。


(#,,゚Д゚) ゴルァ!

(;^ω^) こ、怖いお!逃げるお!


 そして、他の猫にも酷く八つ当たりし続けたためか、いつの間にか俺はこの街の一区画を縄張りにしなければならなくなっていた。
 必然的にしぃ以外の猫と馴れ合うこともなくなる。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:14:23.35 ID:oyu6tF5WO
 縄張りが広がるほどに忙しくなり、ついにはしぃと過ごせるのは夜中だけになった。
 彼女を危険に合わせない為にも、他の猫に舐められることは出来ないからだ。

 不思議なことに縄張りが広がれば広がるほどに俺は袋小路に追い詰められるようだった。

 つまりは息が詰まるような敵意を他の猫に向けられながら生活していたのだ。

 明らかに分不相応だった。
 もっとも、愚かなことにそれにさえ気づいてはいなかったが。


(  ) また行っちゃうの……?


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:15:43.04 ID:oyu6tF5WO
 秋口、俺がいつものようにパトロールに行こうとすると誰かに引き止められた。
 冷たくなってきた空気がざわざわと音を立てる川縁の土手。


(*゚ー゚) ……

 振り向けば月に照らされながら微笑む青い眼の白猫。やはりしぃだった。


(*゚ー゚) ギコくんは何を守りたくて頑張ってるの?

 今思えば俺がパトロールの合間に他の牝猫を孕ませていたことも彼女は当然知っていたのだろう。
 苛立って虚勢を張っていただけの馬鹿な俺は思慮を巡らせられていなかったのだ。


(,,゚Д゚) お前を守る為だろうがゴルァ!

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:17:17.56 ID:oyu6tF5WO
(*゚ー゚) だったら私のそばで守ってくれればいいじゃない
    行かなくてもいいよ?

(;,,゚Д゚) ……


 先日尋ねたところ、あれは疲れきっていた俺への労いだったらしい。

 しかし張り詰めていた俺は、その言葉によって何もかもが急に馬鹿らしくなり、それからは数日に一度パトロールをサボる癖ができた。

 他の猫への警戒は変わらなかったがそれは彼女に近づく猫に限った。
 もうそれ以上広範囲に手を回すのが面倒になったのだ。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:18:24.49 ID:oyu6tF5WO
 いつしか縄張りは狭まり、最小限になっていった。

 余所で作った俺の子が時々顔を覗かせると、俺は後ろめたさに戦慄した。本当に、恥ずかしいほど浅はかだ。
 しかし、しぃは嫌がりもせずやんちゃなその子猫らを可愛がった。


 その子猫らも大人になり、今ではしぃと居るだけで俺は幸せで満たされている。


(,,゚Д゚) ゴルァ!車が危ねえぞ!

(*゚ー゚) うん、気をつけるよ

 そして季節は春。いつかの川縁の土手でしぃは蛙を追い掛けている。
 俺はしばらくその様子を横目で見た後うたた寝についた。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:19:37.78 ID:oyu6tF5WO
 子猫と戯れるしぃ。鮮やかな緑。麗らかな空気の中でみる夢は優しい。

 だけど今。目を覚ましてみると彼女は居なかった。

(,,゚Д゚) しぃ……?
     しぃ!!?

 しぃは俺がどこかへ行かない限り俺から離れることはない。


 嫌な予感がした……。





ギコの視点1  了

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:21:05.07 ID:oyu6tF5WO
 時間感覚が無いので定かではないけれど、葬儀が終わって10日ほど経ったのだろうか。

('A`) 「クー……」

 交通事故なんて馬鹿みたいにありがちな原因で、この世からクーがいなくなった。
 初めてできた彼女で、親友で、良き理解者で、母親代わりなのに、その全てを一度に失った。

 煙草でも吸おう。
 今はまだ何も考えたくない。

 火を付ける手の爪が垢まみれだとか、ガチガチ震えているだとかは、どうでもいいことだ。

 とにかく、逃げたい。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:23:43.77 ID:oyu6tF5WO
('A`)y-・~~

 煙草を燻らせる。
 だが俺は別に煙を吸うのが好きなわけではない、むしろ嫌いだ。
 やはりすぐに煙草を灰皿替わりの皿に押し付けた。

('A`) 「死ねばいいのに」


俺。

 気力が湧かないやる気が起きない死にたい。
 自分を人間だと言うのもおこがましいく思える。社会生活をまともに行っていない俺は人間らしい存在ではない。

 もう、ここ一週間はコンビニににすら出かけていない。
 そろそろ腹が減った気がする。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:26:04.36 ID:oyu6tF5WO
 カップ緬がまだあったかもしれない。
 ベランダの前の窓際。ゴミが山積みの床を掻き分けて何か食えるものを探していると、金魚鉢を見つけた。


('A`) 「……あ」

 二週間前から替えられていない水は緑に濁っている。浮かんでいるのは白くてぶよぶよになった和金。
 赤みがかった金色の鱗の面影はもはや見られない。


('A`) 「何だよ」

 俺が死なせたのに、激しい怒りが沸いた。こいつまで俺を置いて逝きやがったのかよ。ふざけんな。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:28:15.56 ID:oyu6tF5WO
('A`) 「俺も死なせろよ、嫌だよ、怖えーよ」

 金魚だったモノをよく見ると黴やら何やらで被われており、腐敗臭がした。
 こんなもんを可愛がった時期があったのが嘘のように汚らしい。

 死んだ後のその醜悪な見た目が本当の姿ならば、
 クーも今では汚れていて醜い存在なのだろうか。
 とはいえ、流石に墓を掘り返して確かめる訳にもいかない。

 だから俺の中のクーには未だに醜い部分がない。


ああ、腹が減った。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:32:21.11 ID:oyu6tF5WO
 俺は金魚鉢をそのままに床に座り込んだ。そこで、シロと目が合う。
 クーが拾ってきた猫で、白いからシロという実に安直な名前。


(*゚ー゚)

 そいつが、笑っているように見えた。

 その視線は俺を馬鹿にしているのか、いや、そうに違いない。いつまでもクーが死んだ事実を受け入れられずにもがく俺を面白がっているな。

 なあ、両親もおらず恋人にも死なれた俺を嘲笑っているんだろう。止めろ。

 俺を見るな。見ないでくれ。


('A`) 「見るなって言ってるだろ」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:34:52.84 ID:oyu6tF5WO
 気がつくと、金魚鉢はシロに向かって投げつけられていた。

 にゃああ、と一声叫んだシロにガラスがぶち当たって砕ける。


('A`) 「な……」

 スローで霞がかったように流れていた時間が急に流れ出す。
 自分がしたことが現実に見えなかった。
 馬鹿、猫なら避けろよ。何してるんだよ。何してるんだよ俺。

 シロは片耳をぶら下げてて、そこから血が溢れてて、それでも俺を見つめてあああああああああああ。

 お前も俺を置いて死ぬのか。止めろ。止めてくれ。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:37:10.29 ID:oyu6tF5WO
 とっさに近づいてシロを抱きしめると鼻血が出ており辛そうに息をしていた。
 飛び散ったガラスを踏んだけれどそんなことどうだっていい。

 最近ろくに世話をしていないからか、少し落ち窪んだ瞳は閉じられている。
 俺は何てことをしてしまったんだ。
 ごめん、シロ、クーの遺したシロ……クー……。


 風が強いのか、後ろの窓がガタガタと震えているが、俺自身の震えなのかもしれない。それさえ、わからない。


 たすけて
 誰か助けて



ドクオの視点1   了

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:39:21.02 ID:oyu6tF5WO

 大罪を犯し続けた。
 
だから罪を償う為に現世に縛り付けられてしまったのだ。
 証拠に、何もかもが死んだときのままだ。腕にはめられた時計は動かない。
 顎は外れ、頭から血が流れ、首も捻れている。


川д川

 わかっている。君に会いに行かなければならない。


 許されなくても、せめて……

 

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:42:28.79 ID:oyu6tF5WO
*****
 高校二年生の冬。
 学級委員長の私はクラスメイトの母親が亡くなったとき、クラス代表で葬儀に参加しなければならなかった。


ξ ゚⊿゚)ξ 「引きこもりの鬱田の母親が亡くなったくらいで
      葬儀に出席しなくちゃならないなんて災難ね」

川 ゚ -゚) 「そんなことはない。人の死を悼むことは大切だ」

ξ;゚⊿゚)ξ 「おー、偉いなあ」

 大嘘だ。正直、面倒だった。
 学校に来てるのをほとんど見ない鬱田の母親など知りもしない。
 それでも私が担任の頼みを断らなかったのは「いい子」でありたかっただけなのだ。


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:44:38.51 ID:oyu6tF5WO

川 ゚ -゚) 「この度は心よりお悔やみ申し上げます」

('A`)

 返事はない。

 久々に見た彼は、細身だったのが更に痩せていた。まるでいつかテレビで見た北の某国の路上生活者のようだ。
 目は虚ろで、泣きはらした跡がある。

 藻主は彼の父親ではなさそうだった。恐らく、家庭の事情があるのだろう。

 数十人のすすり泣きが聞こえる葬儀は、彼の母親が周りに愛されていたことを感じさせて
 よくわからない感情の涙を、私も少しだけこぼした。
 

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:46:44.33 ID:oyu6tF5WO
 葬儀場に集まっていた人々がちらほら帰りはじめる時間、私は彼に話しかけることにした。

 あれは、同情ではなく、興味に近かったと思う。我ながら最低だ。


川 ゚ -゚) 「何も言えないが……その……元気を出してくれ」

('A`) 「……」

 彼は怪訝そうに、侮蔑したような視線を私にぶつけた。
 まるで私の内面を見透かされたようで、一瞬鳩尾がひっくり返るような感覚に晒される。


川 ゚ -゚) 「いや……その……」

('A`) 「遺産、見たことないような桁だった」

川 ゚ -゚) 「え?」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:48:52.28 ID:oyu6tF5WO
 自分を正当化するための言い訳を練っていたため、何を言われたか理解するのに数瞬かかった。
 すると鬱田が付け足す。

('A`) 「親が、残した金」

川 ゚ -゚) 「そうか……当面生活に困ることはないな」

 言ってから、しまったと思った。あまりにも軽率な言葉だ。


('A`)

 まただ、その視線。
 私の本当に汚らしい部分を注視するような、醜悪さをを高見するような、そんな目。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:51:24.07 ID:oyu6tF5WO
川 ゚ -゚) 「く、クラスメイトとして何か相談に乗れることがあればいつでも言ってくれ」

('A`) 「……ああ」

 私は足早にその場から立ち去った。
 知られてはいけない秘密を、隠し通していた秘密を暴かれた、と、ただ怯えてしまっていた。

 そしてその夜、私は自室に鍵をかけて一晩中泣き続けた。



 翌日の放課後、私は担任に住所を聞いて鬱田の家へ向かった。
 私の内面を、誰かに暴露されてはいけない。口止めしなければ。今まで築いてきた「いい子」でなければ。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:55:35.68 ID:oyu6tF5WO
 アパートの一階。彼の家の前。チャイムを押して待つ。


('A`) 「素直さん……?」

川 ゚ -゚) 「そうだ、良かったら上げてくれないか」

 ドアが開く。彼は小さく、どうぞ、と言った。
 部屋に上げられると、驚くほどに荒れていた。襖は破れ、ゴミ箱は逆さになってゴミを散らしている。
 恐らく両方とも彼が蹴ったのだろう。


('A`) 「散らかっててごめん、何か用事……?
    あ、プリントとかか」


川 ゚ -゚) 「無理に平静を装わないでほしい
     見ているこちらが辛いよ」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 19:58:46.85 ID:oyu6tF5WO
 もちろん嘘だ。
 この言葉は、私の醜さを知られた以上、彼の弱さも見なければ安心出来ないというあまりに歪んだ考えから生まれた。


('A`) 「あーうん、ありがとう
    でも大丈夫……」

川 ゚ -゚)

 違う、違う違う違う違う。
 何もかもわかっているんだ。私の考えなんて読まれているに決まっている。
 でなければ、普通は泣くはずだ。
 でなければ、普通は辛さを見せるはずなんだ。

 感じたことのない恐怖、それがパニックに陥った私の目の前にいた。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 20:02:49.01 ID:oyu6tF5WO
川 ゚ -゚) 「本当は辛いんだろ?なあ?」

 鬱田の肩を揺さぶる。私はヒステリーを起こしかけていた。
 すると、彼が手を払いのけた。


('A`) 「何で俺にそんなに構うの?」

川 ゚ -゚) 「う……」

 そして、いきなり唇を強く塞がれた。
 何が起きたのか理解したときにはもう彼の唇は離れていたけれど。


('A`) 「……」

 それをした張本人は先ほどからと何も変わらない胡座の姿勢でこちらに視線を向けている。
 もう私には今のが現実の出来事であったのか確かめる術すらない。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 20:06:16.37 ID:oyu6tF5WO
川;゚ -゚) 「いや、私は……」

 冷や汗が額から顎にかけて流れた。口ごもり、言葉が出ない。

 それから数秒ほど無言の時間を過ごし、彼は私に抱きついてきた。

 何故かは自分でもわからない。でも、これ以上彼に化けの皮を剥がれるわけにはいかないと、そう思って必死で。
 だから私は動かなかった。
 彼を突き飛ばして帰ることで何かが壊れてしまう気がしたのだ。


川;゚ -゚) 「……」

('A`) 「……」



結果的に言えば、その日から私は彼と付き合うことになった。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 20:09:03.78 ID:oyu6tF5WO
 あの後、突然私の胸で大声で泣いた彼。
 私は必然的に彼が私の本質にまるで気づいていなかったことを知ることになる。
 彼は自身を抑圧して全ての感情を表に出さなかったに過ぎないのだ。
 それを知った瞬間、1人悶々と勘違いに苦しめられていた私の悩みが嘘のように消えた。

 それでも私が彼と付き合ったのは、他人を見下すことにえもいわれぬ快感を抱いてしまったからだ。

 彼は私より優れていることが何一つない。そこに惹かれた。


川 ゚ー゚)

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 20:11:48.13 ID:oyu6tF5WO
 そして、誰かが自分の全てを私に依存させることに甘んじたのが、何よりも嬉しかった。
 いつしか彼は私をクーと呼び、私は彼をドクオと呼んだ。


('A`) 「俺……料理も掃除も苦手で……」

川 ゚ -゚) 「大丈夫、私がやってあげよう」

('A`) 「ごめんな、ありがとう」

 日に日に駄目人間になってゆくドクオが堪らなく愛おしかった。
 私がこうやって助けてあげなければ死んでしまう弱い存在なんだ、と彼を侮蔑し、嘲笑う。

 そのような私の本心を疑いもせずに、盲目的に私を信じるなんて、ああ、愚かの極みだよ。可愛いドクオ。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 20:14:12.80 ID:oyu6tF5WO
 地元の国立大学に入学し、私はドクオと一緒に暮らすようになる。
 私の親に対する名目は一人暮らしだったが、殆ど帰らなかったのだ。

 そしてある日猫を拾った。私に依存する存在を増やしたかったから。


川 ゚ -゚) 「河原で……ダンボールに入った猫がいたから拾った」

('A`) 「ここで飼うの?」

川 ゚ -゚) 「ああ」

 ダンボールの中で眠る子猫にを拾って以来、ドクオがシロを異常なほどに可愛がるのが可笑しくて仕方がなかった。

 弱いもの同士の傷の舐めあいに近いものだったのだろう。
 それが私には何とも滑稽だった。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 20:16:24.53 ID:oyu6tF5WO
 しかし、彼の母親の葬儀から一年半ほど時が過ぎて大学の長い夏休みも始まるころ、幸せは終わりを迎えた。


∠ ゚ -゚) ('ー` >

川 ゚ -゚) !

 歩道を歩いていた私は子猫二匹が道路にいるのを助けようとして、道路へ走り、
信号無視の酔っ払いの車に気づかなかったのだ。

 ドン、と衝撃を受けて宙を待った後、待ち受けていたのはコンクリート。

 人生の終わりは、呆気ない。

 私は、死んでしまった。
 私に全てを依存させることによって何をもする気力をなくしたドクオを残して。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 20:19:34.94 ID:oyu6tF5WO
川д川

 結果、私は現世に留まっている。彼を救わなければ成仏どころか消滅さえできないらしい。


(,,゚Д゚) ゴルァ!

川д川 え?

(,,゚Д゚) お前……死者だけど少しだけしぃの匂いがする

 雄猫が私に話しかけてきた。
 驚くべきなのか、しかし私にそんな感情は残されていなかった。
 浮かんだのはこの茶色の雄猫が話し相手になるのだろうか、という思考だけ。


川д川 しぃ……?

(,,゚Д゚) 青い目の白猫だ!!

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 20:23:58.35 ID:oyu6tF5WO
 それに思い当たる節は1つだけだ。

川д川 シロのこと……?

(,,゚Д゚) 居場所知ってんなら教えろゴルァ!連れ戻しにいく!

 雄猫が私に飛びかからんばかりに大声で叫ぶ。
 しかしそれはドクオのもとへ行く、つまり私が自らの罪に向かい合いにいくこと。


川д川 ……

(,,゚Д゚) 答えろゴルァ!

川д川 わかった、ただし……


 私が条件を話すとその雄猫は快諾し、私たちは彼のアパートへ向かった。



クーの視点   了

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 20:37:16.79 ID:oyu6tF5WO
 誰かが抱きしめてくれている。
 それだけでもう何も要らないから泣かないで。


(;A;) 「シロ……シロ……」

(*゚ー゚) 大丈夫だよ
    金魚鉢が当たっただけだもの

 震えている彼を暖めたいのに、何故か私の体は冷たくなってゆく。
 意志とは無関係な、抗えない力がそこにはあった。

 ドクオさん、クーさん、ギコくん……なんか寒い、寒いよお。
 私の体が次第に動く力を失ってゆく感覚が怖いよ。

 でもここで、ガタガタ震えている音はドクオさんの震えだけじゃないと気づいた。

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 20:40:25.89 ID:oyu6tF5WO
(,,゚Д゚) ――!!

 見えたのはギコくん。


(*゚ー゚) 幻覚……?

(;A;) 「どうしたシロ?」

 ドクオさんは私が窓の外を見て鳴いたのを不思議に思ったのか後ろを振り向いた。
 やっぱり、ギコくんがベランダから窓に強く体当たりをしてる。


(;A;) 「しぃの友達か……」

(*゚ー゚) 違うよ、恋人

(;A;) 「わかった、部屋に入れてやる」

 私を抱いたまま、覚束ない足取りでドクオさんは窓に近づいた。
 ギコくんはとたんに落ち着いて彼が窓を開けるのを待つ。

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 20:44:40.43 ID:oyu6tF5WO
 そして窓が開くと、ギコくんはすぐに私を見上げて一声鳴いた。

 何かを察してくれたのかドクオさんが私を静かに床に降ろす。
 慌てて走り寄り、私を舐めるざらざらの舌。茶色の毛と瞳。
 ああ本当にギコくんだ。


(,,゚Д゚) しぃ!?
     どうしたんだその怪我!!

(*゚ー゚) ちょっと……色々

 声を出すのもつらくなってきて、左耳から脳髄までが熱を持ったように感じる。

 それでもなるべく平静に答えた。

 私はとてもずるいことをしたから、最後くらいはギコくんに迷惑をかけたくなかった。
 多分、ギコくんは私がもうすぐ死ぬことくらい一目見て理解しただろうけど。

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 20:47:03.85 ID:oyu6tF5WO
*****

 あの日、目を覚ますと人間の家の中だった。
 河原の草村で蛙を追っかけてて、ダンボールで眠くなって、それから……。


('A`) 「クー、猫が起きたみたいだよ」

(*゚ー゚) !

川 ゚ -゚) 「本当だ、おはようシロ」

(;*゚ー゚) いや、ここはどこ……?

 ダンボールからそろりと出ると、皿に牛乳と鰹節をそれぞれ入れて置いてあった。
 遊んだ後眠っていたからかちょうど空腹だったところだ。
 食べても、いいよね。

('A`) 「お、食べてるぞ」

川 ゚ -゚) 「元は飼い猫だったのが捨てられていたのかな」

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 20:50:27.22 ID:oyu6tF5WO
(*゚ー゚) ちがうよ

('A`) 「だろうな、じゃないとこんなに大人しくないだろ」

川 ゚ -゚) 「こんなに可愛いのに酷い人間もいるものだ」

(;*゚ー゚)


 話を聞かない人達。口に鰹節を含みながら話す私が悪いのか。
 とにかく、この日私はシロという名前を与えられて半ば強制的にこの家に住むことになる。


 確かにいつだってギコくんは大好きで、会いたかった。
 けれど、彼らとの暮らしは逃げる気が起きないくらいに平穏で幸せなものだった。

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 20:53:07.97 ID:oyu6tF5WO
 ギコくんの縄張りの中だけで暮らしていた私には、住まう空間こそ狭まれども未来が広がった気がした。

 子どもを産めない私。
 ギコくんの妻な私。
 ギコくんの妹な私。
 何も出来ない私。
 死ぬまでギコくんやその子猫以外と関わることができないと思っていた私。

 だからこそ、あまりにもその生活は捨てがたかった。


川 ゚ -゚) ('A`)

 そしていつしか私にはギコくんと同じくらい好きな相手がふたりも出来て、

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 20:56:56.21 ID:oyu6tF5WO
 だから帰らなかった。私は結果的にギコくんを見捨てたんだ。


 ごめんねギコくん。
 目がもう開かない。


(,,゚Д゚) ……

(*-ー-)

 私を舐める舌が止まった。そして私から離れて行く足音。まだ生きてるよ、と伝えたいのに声が出ない。
 息すら、出来ない。


 そしてドクオさんの叫び声が聞こえた。ねえ、何が起きてるの。

 けれども私の意識はそれを知ることを阻むように落ちてゆく。

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 20:59:40.70 ID:oyu6tF5WO
 お願い、教えて。
 ギコくんはどうしたの。


(*-ー-)

 最期の望みも叶わn――



しぃの視点   了

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 21:01:52.89 ID:oyu6tF5WO
('A`) 「うがあッ……」

 突然、シロを舐めていた野良猫がこちらを振り向く。

 そして次の瞬間には俺の喉にそいつの牙が刺さっていた。
 半狂乱で引き剥がそうとするとそれは余計にくい込み、血が胸を伝うのを感じた。


(,,゚Д゚)

 近くにあった何かでそいつを殴る、殴る、殴る。離れろおおおおお。
 肉が裂かれる気が狂いそうな痛み。
 喉の何かが潰れる音がした。

 ヒューヒューと耳障りな音がして、それが自分の喉からだと気づく。
 いくら殴っても猫は離れない。

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 21:04:11.14 ID:oyu6tF5WO
 あああああ、あ、死ぬ。
 苦しい。やめて。やめてくれ。

 無我夢中で箸だと思う何かをその猫に突き立てた。
 手に生暖かい血のぬめりを感じるけれどそれでも、なお喉に牙をくい込ませている。
 どうして俺がこんな目に。

('A`) 「ぁあ゛…あ゛ば」


 誰か助けて。息が出来ない。苦しい。痛い。喉が裂けてるんだ。


('A`) 「ひゅ……びゅ……」


 クー……。

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 21:06:37.96 ID:oyu6tF5WO
('A`) 「ぐ……ごぷ」

 口から血塊が吐き出された。
 頭から床に、倒れる。
 そして視界が暗転した。


 やがて、何かが見えてくる。


川 ゚ -゚)

 クーだ。

 彼女が近づいてきて、そして少しずつ俺との距離を縮める。


川 ゚ -゚) ごめんなドクオ、一緒にいこう
     今度こそ本当の意味で君を大切にしたい


('A`) クー……!

 何の迷いもあるはずがない。
 俺は彼女のほうへ必死に走った。

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 21:09:24.98 ID:oyu6tF5WO
川 ゚ー゚)

 クーが微笑み、手を差し伸べてきた。俺は慌てて、しっかりとそれを掴む。
 瞬間、世界が光を増す。
 俺の手を握る反対の手で彼女が指した先を見ると光源があった。

 今まさにその光源に、猫が二匹飛び込もうとしている。

 幸せそうに、寄り添って。


(,,゚Д゚)(*゚ー゚)

 いや、あれは……

('A`) シロなのか……?

(*゚ー゚) ……ドクオさん


('A`) お前らを殺してしまってごめん


110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 21:12:23.25 ID:oyu6tF5WO
 言葉が通じるのは、何故か初めからわかっていた気がする。
 そして俺の言葉にシロはにっこりと笑った。


(*゚ー゚) ドクオさん、私は幸せだから大丈夫だよ
    来世こそギコくんの子を産めますように……

(,,゚Д゚) ああ、何よりお互い様だ

('A`) ……

川 ゚ -゚) じゃあ、みんなでいこうか


 自然に笑みと涙が零れた。
 死んでからでもやり直せるんだ。
 何度でもクーと出会えるんだ。


(*゚ー゚) さあ

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 21:15:31.65 ID:oyu6tF5WO
 光源へシロが吸い込まれるように消えていった。その後を追って雄猫も同じように消える。


川 ゚ -゚) 私達も一緒に

('A`) ああ、いこう

 クーはやはり女神のようだと思えるほどに優しく、美しい。
 そして俺と手を繋いだまま光に一歩ずつ近づいてゆく。


('A`) 次は、猫がいいな
   クーと一日中一緒にいたい

川 ゚ -゚) 私は……君に出会いたくな――


 何もかもが光に満たされて、クーの言葉は俺に聞こえなかった。



ドクオの視点2   了

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 21:17:51.02 ID:oyu6tF5WO
 エピローグ

 夏の日差しが厳しくなり、この春に産まれたブーンの子猫も大きくなってきた。
 誰かの家の軒先、木陰にブーンが転がっている。隣の木の陰にはその子猫たち。


( ^ω^) ギコが死んでから更に僕の縄張りが広がったおw僕がこの町のボスだお!

(,,・д・)∠ ゚ -゚) おとうさあーん! ('ー` >(゚∀゚*)

( ^ω^) なんだお、チビ助ども

(*゚ー゚) ……ギコクンヲナメナイデネ?

(;^ω^) え

(*゚∀゚) あっそぼー!





120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 21:20:55.85 ID:oyu6tF5WO
以上で投下終わりです。
支援をくださった方、読んでくださった方、ありがとうございました。

122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 21:22:30.85 ID:f0+/7CDoO
狂っとる乙w

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 21:26:37.38 ID:oyu6tF5WO
ところどころミス
>>15
ギコの視点1   了
→ギコの視点   了
>>18
おこがましいく思える
→おこがましく思える


>>122
ほのぼの書いてた反動で狂ったのが書きたくなったんです

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 21:30:58.70 ID:MF+2kD6oO
>>124
何書いてたの?

126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 21:34:49.64 ID:oyu6tF5WO
>>125
まとめもない作品です

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]:2007/11/14(水) 21:37:40.24 ID:MF+2kD6oO
>>126
そかそかなかなか好きだったからまたドクオ×クーでクオリティの高いの書いてくれ
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